墓じまいとは?かかる費用や永代供養墓へ改葬するまでの流れ

20年9月24日 公開 更新
監修:終活カウンセラー竹田 繁紀

近年、様々な事情から墓じまいを検討する方が増えてきています。
しかし実際に墓じまいをする場合、「墓を閉じても問題ないの?」「罰は当たらない?」などと様々なことが気になるものですよね。
そのため今回は、墓じまいとは何か、また墓じまいにかかる費用や一連の流れについて解説します。

墓じまいとは何か

墓じまいとは何か

以下の通り、墓じまい(改葬)をするケースは年々増加してきています。

<改葬数>

年度

改葬数

平成30年度

115,384

平成29年度

104,493

平成28年度

97,317

平成27年度

91,567

平成26年度

83,574

出典:衛生行政報告例(平成2627282930度)

ここではまず、墓じまいの基本的な意味合いやどんな人が墓じまいを検討するのかについてご紹介します。

墓じまいの意味

墓じまいとは、これまでご遺骨を納めていた墓を撤去して土地を更地にし、墓地の管理者に墓地を返還することです。
お墓の後継者がいなくなったり、お墓が遠くにあってお参りに行けなくなったりなどの理由から、元のお墓を解体・撤去して別の場所にご遺骨を移すことを言います。
墓じまいの際には、お墓撤去工事の依頼や取り出したご遺骨を何処に移すかなど、様々なことを決めてから臨まなくてはなりません。

墓じまいを検討する理由

墓じまいを検討する理由としては、以下のようなものが挙げられます。

<墓じまいを検討する理由>
・お墓の後継者がいない
・お墓の管理をし続けるのが大変
・お墓が遠方にあってお参りに行けない
・お墓の管理にかかる費用を負担し続けるのが難しい
・結婚をすると夫婦それぞれの実家のお墓を守るのが難しい
・高齢になって墓参りするのが大変

少子高齢化が進んでいる現在、お墓の管理を承継することが難しいケースも多くあります。
また「生まれた場所で一生を過ごす」という人が減っているため、お墓が遠方にあって管理やお墓参りが難しいという方も多いのです。
社会の変化とともにお墓との付き合い方も変化しています。自分の世代はもちろん、その子ども世代にとってお墓の管理が大きな負担にならないよう、墓じまいを検討する人が増えていると言えるでしょう。

墓じまいをするメリット・デメリット

墓じまいをするメリット・デメリット

経済的な事情やお墓が遠方にあるため管理やお墓参りが難しいなどの理由により、墓じまいを検討する人が増えているのが実情です。
ここでは、墓じまいをする具体的なメリットやデメリットについて詳しく解説していきます。

墓じまいをするメリット

墓じまいをするメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

<墓じまいをするメリット>
・お墓の維持や管理の負担が軽減される
・お墓の後継者の負担が軽減される
・改葬先によってはお参りがしやすくなる
・無縁仏となってしまうことを避けられる
・お墓を放置してしまっているという精神的な負担が軽減される

墓じまいをする大きなメリットは、お墓の管理やお参りに関する親族や将来世代の負担を軽減できることでしょう。また、改葬を行ってしっかりと供養してもらうことで無縁仏となってしまうことを防げるだけでなく「お墓、どうしよう…」という精神的負担から解放されるのも大きなメリットと言えます。
墓じまいを選択することで、経済的な負担だけでなく精神的な負担も軽くし、親族が前向きに過ごしていくことにつながケースもあるのです。
さらに、改葬先を居住地からアクセスしやすい場所にすることで故人をより身近に感じることができ、お参りにも行きやすくなるでしょう。

墓じまいをするデメリット

墓じまいには多くのメリットがありますが、残念ながらデメリットもあるのが実情です。
墓じまいをするデメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

<墓じまいをするデメリット>
・墓じまいをするにも費用がかかる
・墓じまいをめぐって親族と揉める可能性がある
・菩提寺とトラブルが発生する可能性がある
・これまで受け継いできた先祖代々の墓がなくなる
・墓じまいに罪悪感を覚えて精神的負担が増してしまうこともある

墓じまいのデメリットとしてまず考えられるのは、墓じまいにはお金がかかるということでしょう。
お墓の撤去工事や菩提寺への離檀料、改葬先にかかる費用など、ケースによってはまとまった費用がかかる可能性もあります。
また、お墓の管理は親族全体が関わることであり、墓じまいに関して十分な相談を親族間で行わなかったためにトラブルに発展することも残念ながらあるのです。さらに、先祖代々受け継いできたお墓を撤去することへの引け目を感じてしまう方もいらっしゃいます。
ただし忘れてはいけないことは、正しい手順と手続きを踏めば、墓じまい自体は決して悪いことではないということです。
「祟りがあるかも…」などと気にする方もいらっしゃいますが、閉眼供養をしっかりと行うことで、故人にとっても決して悪いことではないことを理解しておきましょう。

墓じまいにかかる費用

墓じまいにかかる費用

墓じまいにかかる費用は、墓石の撤去と改葬先にかかる費用などを合わせて、トータルで50万~数百万円程度かかるのが一般的です。
金額の幅が非常に広く感じる方もいるかもしれせん。しかし、一口に墓じまいと言っても墓石の撤去工事や新しい改葬先の購入、寺院への離檀料など様々な費用がかかり、ケースによって金額が異なります。
ここからは、墓石の撤去・改葬先の購入・離檀料それぞれの費用内訳について詳しく解説していきます。

墓石の撤去にかかる費用

墓石の撤去にかかる費用には、以下のようなものがあります。

<墓石の撤去にかかる費用>
・墓石撤去工事費用:墓地面積1㎡あたり10万円程度
・閉眼供養のお布施:3万~10万円
・行政手続き費用:~3,000円

上記の合計で、20万~40万円程度を費用の目安として考えておくべきでしょう。
ただし、墓石の撤去工事は上記の通り墓地の広さによって変化するうえ、墓地の立地(重機が入りづらい場所は費用がかかる)や石塔の数などによっても変割るので注意が必要です。

閉眼供養とは元のお墓から魂を抜き、ただの土地に戻す儀式のことです。お寺から僧侶を招いてお経をあげてもらうため、僧侶にお渡しするお布施の費用を見込む必要があります。

新しい納骨先の購入にかかる費用

新しい納骨先にかかる費用の目安は、改葬先ごとに以下の通りです。

<新しい納骨先の購入にかかる費用>
・永代供養(納骨堂):20万~200万円
・永代供養(樹木葬):10万~100万円
・永代供養(合祀葬):10万~30万円
・手元供養:数千~数十万円
・散骨:数万~数十万円
・新しいお墓に移す:100万~数百万円

新しいお墓を探して移すと、新しくお墓を建てることになるため、相応の費用がかかります。
しかし、散骨(山や川、海にご遺骨を撒くこと)や手元供養を選択することで、費用を抑えることは十分に可能です。散骨は勝手に行うと違法となる可能性もあるので、必ず専門業者に相談するようにしましょう。

寺院墓地の場合は離檀料が必要

元のお墓が寺院墓地だった場合は、離檀料が必要です。
離檀とは檀家を離れることを指し、お墓を移すということはほとんどの場合でそのお寺の檀家をやめることになります。寺院の檀家を離れる場合に寺院のこれまでの感謝の思いとして渡すお布施が、離檀料なのです。
本来は気持ちの問題なので離檀料に決まりは無いのですが、おおよそ3万~10万円程度を目安と考えておけば良いでしょう。
ただし、いくら気持ちと言っても支払わないことでお寺とのトラブルに発展することもあるため、お寺の住職としっかり話し合って適切な金額をお渡しするのが大切です。
お寺によっては100万円を超える高額の離檀料を要求してくることもケースもあります。高額請求を受けてどうしても揉めそうな場合は、行政書士や弁護士など法律の専門家に相談しましょう。

墓じまいの手続きの流れ

墓じまいの手続きの流れ

墓じまいの手続きの流れは、以下のように整理できます。

<墓じまいの手続きの流れ>

1.親族との話し合い
お墓の管理は親族全体の問題なので、後々トラブルとならないよう費用負担や改葬先、そもそも墓じまいすべきかなどを事前に親族全体で話し合って合意を得ておくことが大切です。

2.墓地管理者への説明と了承の取り付け
お墓を管理している霊園や菩提寺に、墓じまいの了承を取り付けます。墓地管理者から「埋葬証明書」などを発行してもらう必要がありますので、この段階できちんと話をして了承を得ることが大切です。

3.役所への改葬許可申請
役所に「受け入れ許可証」と「改葬許可申請書」、「埋葬証明書」などを提出して、改葬許可を受けます。

4.閉眼供養
元々のお墓から魂を抜いて元の土地に戻すため、閉眼供養の儀式が必要です。

5.離檀
お墓を移すということは寺院の檀家を離れるということですので、離檀料をお渡しして離檀をします。

6.お墓の撤去工事
石材店などに依頼をして、お墓の撤去工事を行います。撤去業者は、お墓の管理者によっては事前に決まっている場合もありますので注意してください。

7.改葬先への納骨
事前に決定してある改葬先へ納骨します。

改葬許可に必要な書類

役所への改葬許可を取るには、以下のような書類の提出が必要です。

<改葬許可に必要な書類>
・埋葬証明書
埋葬証明書は、現在のお墓にご遺骨が納骨されていることを示す証明書です。
現在のお墓がある墓地や霊園の管理者に発行を依頼します。

・受け入れ証明書
受け入れ証明書は、今のお墓を撤去した後、新しくご遺骨を受け入れてくれる場所があることを示す証明書です。改葬先となる墓地や霊園の管理者に発行を依頼します。

・改葬許可申請書
改葬許可申請書は、墓じまいの許可を取るために必要な申請書です。
各自治体の役所窓口はもちろん、ホームページでダウンロードすることができる場合もあります。

墓じまい後は永代供養墓へ

墓じまい後のご遺骨は、永代供養簿に納骨するのが現在の主流です。
永代供養墓とは、寺院や霊園などにご遺骨の管理や供養を任せる埋葬方法のことを言います。
永代供養には、一定期間の間個別の墓石を立てて納骨をしてその後合祀される方法(個別型)と、最初から個別にせず他の方のご遺骨と一緒に埋葬する方法(合祀型)の2つがあります。
永代供養墓にかかる費用は、おおむね以下の通りです。

<永代供養にかかる費用>
・個別型:30万円~100万円
・合祀型:10万円~30万円

永代供養墓へ納骨するためには、永代供養を行っている墓地や霊園に申し込みましょう。

まとめ

まとめ

経済的な事情やお墓の管理が難しくなったなど様々な理由から、墓じまいを検討する方が近年増えてきています。
墓じまいにはお墓の管理がしやすくなるなど多くのメリットがあるものの、親族間でトラブルが発生したり、墓じまい自体にも費用がかかったりなどデメリットがあるのも事実です。
墓じまいと一口に言っても改葬先には様々な選択肢があります。
親族ともよく話し合ったうえで最適な改葬先を選択するようにしましょう。

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